ADSLから光

ここからは光回線とADSLで悩んでいる方に向けてADSLと光回線の違い、ADSL・光回線のルーツを解説していきます。

ADSLと光回線の違い

まずは基本的な部分として、ADSLと光回線それぞれの特徴などその違いを見てみましょう。

わかりやすく表にまとめてみました。

ADSL 光回線
最大速度 下り:50.5Mbps
上り:12.5Mbps
下り:最大1Gbps
上り:最大1Gbps
回線の共有 電話用のメタル線を契約者ごとに1本占有 ファミリータイプ:光回線1本を最大32人で共有
マンションタイプ:1棟で1本の光回線を共有
通信の安定性
周辺の電話回線や空気中のノイズに左右される

光回線はノイズの影響を受けづらいので安定している
NTT局舎との関係 距離が遠くなると速度低下 関係なし
無線LAN
IP電話
ひかり電話
月額料金 3,000円程度 5,000円程度
初期費用 実質無料 実質無料
お申込みから利用開始までの日数 1~2週間程度 1ヵ月程度

利用する回線の違い

ADSLは既存のアナログ電話回線を利用します。

実際の配線としては、電話回線のモジュラージャックからまずはADSLモデムへ。

モデムから電話機へはモジュラーケーブルで、PCやTV、ゲーム、無線ルーターなどの端末にはLANケーブルで接続します。

光回線は光ファイバーが利用されます。

宅内では光ファイバーの末端にONU(光回線終端装置)やHGW(ホームゲートウェイ=ルーター機能や電話接続の為のVA機能、オプションによっては無線機能を有したONU)が接続され、これから各種端末や電話機に接続されます。

ここでの違いは、ADSLはアナログ電話回線にモデムを、光回線では光ファイバーにONUが使われるという点です。

どちらも回線を端末に接続するための伝送信号変換装置には違いありません。

ただマンションなどの集合住宅では、光回線を幹線として建物まで引込み、そこから各戸へは既存の電話回線を利用するVDSL方式がとられる場合があります。

VDSL方式の最大速度は下り100Mbpsなので「下り最大1Gbps」の光回線プランを希望しても、現実にはかないません。

参考VDSL 速度が遅い理由と速度改善・解決策を解説!

ADSLの月額料金は激安

料金面でいえばADSLのほうが圧倒的に安いです。

例えば現在でも新規申し込みを受け付けているYahoo!BBのバリュープランは、公式サイトからの申し込みなら何と月額1,265円からと、フレッツ光での高いプロバイダ単体料金とほぼ同じで、プロバイダ込みでのインターネットが利用できてしまうんです。

しかも加入特典で初月無料。こんなに安くできるならADSL全盛時代にやってくれよって感じですよね。

ただこれはあくまで一例、一般的なADSL月額料金は概ね3,000円前後です。

ちなみに現在ADSLの新規受付を終了しているNTTは、終了近くの数年はADSLを切り離すためにフレッツ光回線よりADSLの料金の方を高くしていたんですよ。これもひどい話ですよね。

さて光回線の月額料金はプロバイダ込みで5,000円前後から6,000円程度まで。

これも毎月の負担としては大きいので、政府やソフトバンクが何とかしようと色々模索していますが、市場性や他社との絡みでなかなかうまくいきません。

利用者にとっては当然安い方がいいのですが、やはり現況ではADSLに軍配が上がります。

最大回線速度と回線品質や弱点

回線速度は原則圧倒的に光回線が有利になります。

メタル回線(ADSL)と光ファイバーですから、料理でいえばコンロで温めるか電子レンジでチンするかといった圧倒的なスピードの違いがあります。

ただ「原則」とあるのは、光回線でも混み合うと使いモノにならない位遅くなることもあるし、ADSLでも伝送経路の条件が良いと、例えば50Mのプランでベストエフォートつまり50Mbps近くがはじき出される場合もあるんです。

こうなると「ADSLと光回線の逆転現象」が起きてしまい、光回線を契約している人はハズレ、ADSLを契約している人はアタリとなってしまう訳です。

実際筆者の経験上、ADSLでアタリをひいた人はかなりの数に上ります。

また回線業者の打ち出した「回線速度」のカタログデータは鵜呑みにしないことも必要です。

最大1Gbpsをアピールする光回線なら一般的な実行速度は速くても100Mbps以下が常識、それ以上出ている人はラッキーと言えるんです。

ADSLの場合でも、12Mbpsと50Mbpsプランの実行速度は「やってみないとわからない」のが正直な所、ADSLは使わなくなった電話回線を利用している為、当たりハズレが非常に出やすいんです。

またADSLの場合は電話回線にネットの信号を乗せて送る為、回線品質がNTT中継局からの距離やケーブル配線ルートによって、伝送信号の減衰や電力線などによるノイズの影響を受けやすいという弱点があります。

NTTの局舎といえば建物の上に大きな電波塔が組まれてある場所が基地局、郊外の田んぼの片隅や山すそにひっそりと佇むNTTロゴマークの入ったコンクリートの箱状の建物が中継局です。

基地局から送られたADSL信号は、やはり距離によって信号が減衰する為中継局で一度増幅されますが、その後各戸までは電柱を介して送られるのみ。

当然それ以降の増幅はないので、後はどこまで信号のクオリティが維持できるかといった、やはりアナログな一か八かの伝送方式なんです。

これが地方の電柱経由のルートならともかく、街中のように地下に潜ってしまうとどんな配線と混在接触しているかはわかりませんし、その影響は計り知れません。

ここで現実問題として、料金の高いADSL50Mプランを契約しているのに例えば5Mbpsしか出ていない人にとっては、不満と不振が生じて「12Mプランでいいんじゃないか」といったクレームとなる訳です。

提供者の対処としては中継局との距離は変わりませんから「配線を振り替えてみる」「50M用の強い信号で送り直してみる」などとなるんですね。

これで実際12Mbpsを超えればベストエフォートを説明して利用者には50Mプランが維持してもらうといった、やはり何ともアナログ的な対応となってしまうんです。

要するにここでのポイントは「ADSLは物理的(回線の阻害要因)に、光回線は人的(混み合う)に回線の不安定要素がある」ということです。

もちろんここでも、光回線が有利な事には違いありませんが、後は端末次第です。

■その他の違い

インターネット契約での重点ポイントである「月額料金」「回線速度・品質」について、ADSLと光回線の違いはお解り頂けたでしょうか?

先の比較表では、その他工事面や実用面についても触れていますので参考にしてみて下さい。

とくに工事面では、電話回線をそのまま利用できるADSLは気軽に利用できるといった点、その分申し込みから開通までが早いといったメリットがあります。

実用面での違いは回線速度にともなう動画閲覧やオンラインゲーム等の可否となりますが、ADSLだから無理と決めつけることまではないと知っておきましょう。

ADSLのルーツと位置付け

今やインターネットは高速かつ大容量の伝送が可能なブロードバンド回線が常識、しかも光回線が主流ですが、このブロードバンド回線のハシリとなった接続方式が「ADSL」です。

電話回線を利用するADSLはその気軽さからあっという間に普及し、インターネット接続といえばADSLと言われるくらいに、ブロードバンド社会に貢献していったわけです。

ところが近年このADSLの提供が続々と縮小、新規受け付け終了という業者も次々に増えています。

そこには既にご存知の「光回線の普及」という背景があるのですが、光回線とADSLは利用する回線/伝送経路が違いますし、そもそも光回線は料金も高い訳ですよね。

ではなぜ安くて気軽にブロードバンド環境が実現するADSLが廃止に追い込まれているのでしょう。

また廃止となれば仕方がないのですが、まだADSLが利用できている段階で光回線に乗り換える必要はあるのでしょうか。

この辺り、インターネット回線のルーツをザックリと解説しながら、ADSLの話を進めていきます。

まずは従量制のダイヤルアップでインターネットに節約アクセス

今から思えばその昔、1990年代にインターネットが知られはじめた頃は「何だ?パソコンで新聞のようにニュースや天気予報が見えるぞ、しかも1日1回どころか、次々に世界中から新しい情報が入ってくる」なんて世の中はビックリ。

1992年には日本ではじめてISP(インターネットサービスプロバイダ)が一般向けにサービスを開始、インターネットの便利さはバブル景気と入れ替わるように、あっという間に日本中に広まっていったのです。

当時インターネットを見るには、電話回線からモデムを介してパソコンを繋ぎアクセスする「ダイヤルアップ」という方式でした。

あの「プルルル…ピーッガーッ♪」という独特の接続音が鳴り終わった瞬間、パソコンの画面に真新しい情報がパッと表示されたときの嬉しさと言ったら…。

逆にうまく繋がらない場合の「ツーツーツー♪」音に、歯がゆい思いを頂いた人も多いのでは?

しかもこのダイヤルアップ接続、当初は繋いだ時間だけ課金される従量制。

必要なページを見つけたらウインドウ画面を増やしひと通り表示したままアクセスは切断、表示されている画面を後からゆっくり確認するなどと、従量課金ならではのこまめな節約方法でインターネットを利用していたなんて、今から思えば懐かしいですよね。

ダイヤルアップではスピード容量ともに限界に

しばらくはこのダイヤルアップ方式でインターネットが利用されていたのですが、いかんせんアナログ回線では56kbps、ISDN回線でも64kbps~128kbpsという回線速度では、少し大きな画像になると大きな負荷がかかり表示するまでに時間がかかるなど、サイトを提供する側にもその制作過程でさまざまに負担軽減策がとられていたんです。

あまりに表示が遅いと、閲覧者にソッポを向かれてしまうわけですね。

もちろん閲覧者もタダで見ているわけではないですから、少しでもスイスイ快適なサイトを選択するのも無理はありません。

時代は情報化社会に突入、利用者のニーズも多様化していますから、より多くの画像や場合によっては動画の提供も必要となってきます。

そこでNTTは1995年、同一市内隣接地区に限り夜11時から翌朝8時まで通話料金が定額になる「テレホーダイ」の提供を開始、97年には最大速度128kbpsのフレッツ(常時接続)サービス「OCNエコノミー」を月額38,000円で提供開始します。

最大1Gbpsで月額5,000前後さらに複数台つなぎ放題の今を思えば、まだまだ信じられない位の低コスパだったんですね。

検索エンジン「Yahoo!JAPAN」もこの時期(1996年)にスタートしています。

ISDN、ADSLの登場でブロードバンド時代に突入

2000年に突入し日本のインターネット普及率は、全人口の37.1%にまで広がります。

またここで「Google」や「Amazon」もサービス提供を始めます。

じつはこの前年1999年にはアナログ回線を使うADSLが登場していたのですが、まだNTTでの接続実験サービス段階で一般には普及していなかったんです。

この時期広く浸透していたのは、デジタル回線を使った「ISDN」方式。

電話回線を利用しダイヤルアップ方式でインターネットに接続することはそれまでと同じなのですが、ISDN方式では電話番号を2つ持っている為「通話しながらFAXやインターネット」といったことができるのが特徴でした。

またISDNは「アクセスポイントに電話してそこからインターネットに繋げる」というしくみから、光ファイバーを利用し1.5Mbpsデータ転送を可能にした「INSネット1500」なる速度が速いものもあったんです。

さらにISDNの頃より常時接続が広く浸透。

それまで基本使用料に加えて通信費(通話料)がかかっていたものから、いわゆる「つなぎ放題」となった「フレッツISDN」は、ブロードバンド時代への布石となります。

そして2001年、NTTやソフトバンクといった大手通信事業者が、一般家庭向けに常時接続でのADSLの提供を開始します。

NTTは「フレッツADSL」、ソフトバンクは「Yahoo!BB」というわけですね。

ADSLはほとんどの一般家庭に普及している昔ながらのアナログ電話にモデムを接続するだけの手軽さ、またダイヤルアップやISDNと比べて格段に回線速度が向上したことから、インターネットへのアクセス手段としてイッキに浸透していったわけです。

光回線の普及が政府のお達しで急加速体制に

インターネットを利用するには安くて気軽に利用でき、しかもつなぎ放題で動画も見られるADSLでキマリ…と、世の中のブロードバンドはADSLで安泰のように思われたのですが、そこに横槍を入れてきたのが「光回線の普及」と「政府のお達し」なんです。

「インターネットはこれからの社会に是が非」。

インターネットが単なる情報やコミュニケーション手段だけではないことに着目した政府が、2010年ソフトバンクとともに提唱したのが、日本全世帯に超高速通信網を普及させる「光の道」構想です。

この中で、NTTに対し「2015年までに光ファイバーの利用を現在の半額程度に引き下げよ、さもなければ2013年をめどにNTT光回線部門の分社化をあらためて検討する」という方針を打ち出し、光回線が独占状態ながらも普及に低迷するNTTに「喝」を入れたわけですね。

この「喝」の陰には、同業他社最大手のソフトバンクの再三に渡る政府への訴えかけが相当効いていた訳ですが、当時は自社所有の光回線を独自に普及させ対岸の火事を通していたKDDIまでもが、ソフトバンクの熱意に折れ同調したことから、政府がNTTに対し動かざるを得なかったということなんです。

フレッツ光回線の開放&光コラボのスタートでADSLは窮地に

そんなこんなで光回線の普及も頭打ちだったNTTはついに「フレッツ光回線の開放」、つまり光回線の卸売りを決断します。

これが2015年2月にスタートした「光コラボ」です。

参考光コラボのデメリット|メリットと問題事情

光コラボはご存知の通りインターネットの提供に限らず、レンタルした業者はどんなふうに事業展開しても構いません。

また今までプロバイダとしてサービス提供していた他事業者も一斉に自社提供のインターネットサービスとして光コラボプランを提供開始します。

これによりNTTは低迷していた光回線の販売も好調、業績も改善方向へと向かいます。

それもそのはず、原材料を卸売りしておけば後は好きに加工して勝手に売ってくれるわけですから、まったく「損」は無い訳です。

例えれば「役場では頭打ちな観光PRや誘客も民間に任せれば大丈夫」といった一般社会の定説が、ここでも成り立ったわけですね。

さて光回線の加速度的な普及で立場を追いやられたのが、「ADSL」でした。

政府やソフトバンク肝入りの「2015年に全世帯を光ファイバー化する光の道構想」は、さまざまな紆余曲折や現実的な諸問題があり実現には至っていませんが、光ファイバーがどんどん浸透しているのが今の現状というわけです。

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